暗渠とは"蓋をかけられた水路"や"地下に埋設された水路"のことだ。つまり、水面を見ることができない状態にある水路を「暗渠」と呼ぶ。反対に、通常の水面が見える状態の水路は「開渠」と呼ぶこともある。
暗渠は、都市部を中心に日本各地に存在する。そして数多く存在するからこそ、様々な形態のものがある。
地下の水路は、そのままの用途で使われたり下水道に転用されたり。地上部分は、遊歩道になったり、車道や歩道になったり、あるいはただ蓋をかけただけの状態だったり。暗渠は場所や時代などによって、色々な姿を私たちに見せてくれる。
川跡とは、文字通り川、あるいは用水が流れていた跡のこと。そうした「川跡」には、"水が流れていたことにまつわる痕跡"が残っているかもしれない。
このサイトでは、主に名古屋市内の暗渠・川跡=「見えない水流と、失われた川や用水の痕跡」を取り上げている。
ただ、水のネットワークを知る上では開渠も欠かせないこと、また、暗渠の上流や下流が開渠となっている場合があることなどから、暗渠を楽しむ上で暗渠であることに縛られる必要はないと思っている。暗渠・川跡を中心とした名古屋の用水・小河川について知り、そのネットワークを解き明かしていく。それが、このサイトのテーマである。
蓋をされ埋めらて消えてしまった水の流れ。その水は確かに地形をつくり、土地の歴史をつくり、人々の暮らしを育んできた。そんな、水の流れに刻み込まれていた風景や土地の記憶は、川とともに蓋をされ覆い隠されてしまったように見える。
見放され蓋をされ、誰からも見向きもされない。コンクリート色の暗渠からはそんな気配さえ漂う。埋め立てられた川跡、もはやそこに川があったと知る人もほとんどいない。
しかしそれこそが、高度成長や都市化・宅地化、下水道の整備、様々な逆境の中でなりを潜めながら、あるいは姿を変えながら生きながらえてきた彼らの歴史そのものだ。
さあ、暗渠を歩こう。愉しもう。
これまで気に止めてこなかった小さな空き地に、細い道に、どことない違和感に、暗渠・川跡という視点が、新たな気づきを与えてくれるだろう。それは、今までに見たことのなかった街の一面かもしれない。暗渠・川跡を知ることは、その土地の履歴を知ることでもあるのだ。